Vol.6
 世界的な金融不安は、実体経済にも大きな影響を与えている。すでにその直撃を受けている企業も少なくない。しかしこのような状況の中でも、次のチャンスに向けて動き出している企業が存在する。今回で6回目を迎える「ものづくり情熱立国プロジェクト 社長対談」シリーズにご登場いただくのは、メニックス株式会社 代表取締役の櫻井健一氏。チャンスを切り拓くためのキーワードは3次元化だ。同社は2003年から3次元設計に着手し、現在ではAutodesk Inventor Suite/Professional(オートデスク インベンター スイーツ プロフェショナル)を20ライセンス活用。そしてそのノウハウを活かし、今後さらに新たなビジネス分野へ進出しようとしているのだ。それではメニックスではどのように3次元化を進め、それをどのようなビジネスに活かそうとしているのか。同社の取り組みと戦略についてお話を伺った。
3次元化で設計生産性が3〜4倍にアップ
そのノウハウを活かし新規ビジネスの開拓へ
メニックス株式会社 × オートデスク株式会社
さらなる差別化を実現するため3次元化に着手
メニックス株式会社
メニックス株式会社
代表取締役社長 櫻井 健一 氏
 鬼澤 メニックス様は2003年からAutodesk Inventor(以下「インベンター」)を使い始めて、現在すでに20ライセンスを導入されていると伺っております。ホームページや会社案内でも「3次元CAD機械設計のプロフェッショナル集団」というスローガンを掲げており、そこでインベンターが活用されているのは、本当にありがたいことだと思っています。お仕事は半導体製造装置の設計が柱のようですが、具体的にどのような形でビジネスを展開していらっしゃるのですか。
 櫻井 ひとことで言ってしまえば、私どもは技術屋です。今年で会社設立から15年目になりますが、精密機械から環境関係の機械まで、さまざまな機械の設計を幅広く行ってきました。最近では半導体や液晶の製造装置の設計が多くなっていますが、この分野のお客様もその多くは、手書き図面の時代からお付き合いさせていただいております。構想段階から参画して設計図面を仕上げ、ものによっては組み立てまで行えるという、一貫性のある技術提供を行っている点が私どもの強みだと認識しております。
 鬼澤 手書き図面の時代から設計をやられていたということですが、CADを導入されたのはいつ頃ですか。
 櫻井 2次元CADは約20年前、会社を設立する前から使っています。CADが入ることで、設計スタンスは大きく変わりました。手書きの頃は毎回ゼロから設計するのが当たり前だったのですが、CADによって流用設計が当たり前になり、標準化も可能になりました。現在では標準化された設計内容をベースに、カスタマイズやオプション追加といった方法で設計を行うようになっていますが、これは2次元CADの時代に培われた方法論です。
メニックス株式会社 鬼澤 その後、3次元CADへの移行が始まるのですね。
 櫻井 そうです。すでに2次元CADによる設計が業界全体で当たり前になったので、差別化を行うには3次元化が必須条件だと考えていました。3次元CADのデモも見ていましたし、次は間違いなく3次元の時代が来ると感じていました。しかしただ単に3次元CADを導入しても、それを活かせる業務がないと意味がありません。実はちょうど5年前に、お付き合いのある企業様から「高密度配管の設計をやって欲しい」というご依頼をいただいたため、これはチャンスだということで3次元CADの導入に踏み切ったのです。
 鬼澤 配管のような複雑な構造を設計するには、3次元モデルでないと難しいと判断されたのですね。
 櫻井 2次元でも配管設計を行っていましたが、2次元ではパイプ同士の隙間を正確に把握することが難しいため、どうしても勘に頼ることになります。高密度配管のように高密度なものを設計するには、やはり3次元が適しています。
 鬼澤 その頃は何台くらい導入されたのですか。
 櫻井 まず5台導入しました。高密度配管の設計を一手に引き受けたので、仕事量がかなりあったからです。その後段階的に数を増やし、現在では20台になっています。お客様の中には2次元CADの図面をお求めになる企業様もまだ沢山ございますので、2次元CADも継続して使用しています。しかし特にそのようなご要望がなければ、社内の設計業務は3次元で行うようにしています。

生産性が大幅に向上バリューチェーンも3次元モデルで変革
メニックス株式会社
オートデスク株式会社
代表取締役社長 鬼澤 盛夫 氏
 鬼澤 3次元化で設計効率は変わりましたか。
 櫻井 最初はライブラリや共通部品を揃える必要があるため、生産性向上の効果が目に見えるようになるまでには、それなりの時間が必要です。私どもも実際の業務を行いながら、ボトムアップでライブラリの整備を進めていきました。しかし最終的には、必要な設計工数は1/3−1/4程度になっています。
 鬼澤 つまり生産性が3−4倍になったわけですね。
 櫻井 そうです。やはり2次元図面では、複雑な設計において平面や側面で構造を把握しなければならないので、細かい部分のアタリや干渉、隙間がよくわかりません。これに対して3次元は、ひとめでアタリや隙間がわかります。これはすごいことだと思います。また3次元にすると、人の立ち上がりが早いというメリットもあります。
 鬼澤 人の立ち上がりというのは…
 櫻井 短時間で使いこなせるようになるということです。もちろん3次元CADでも機械設計の基本はマスターしておく必要がありますが、3次元は直感的に理解できるので、本質的な部分をきちんと理解していれば、すぐに設計できるようになります。また設計内容を説明する場合も3次元の方が簡単です。そのため設計内容を新しい人に引き継ぐといったことも短時間で行えます。
 鬼澤 設計スタイルはどうですか。
 櫻井 標準化された設計をベースにカスタマイズするというスタイルは、すでに2次元CADの時に確立されていたので、3次元化で設計スタイルが大きく変わるということはありませんでした。しかし設計品質は大幅に向上しています。2次元では見えなかった部分がはっきり見えるので、画面上での検証でも不具合が発見しやすいからです。また設計後のバリューチェーンにも影響を与えつつあります。
 鬼澤 3次元モデルによるバリューチェーンの革新というのは、非常に重要なテーマです。具体的にどのような影響が出ていますか。
 櫻井 3次元モデルを活用して、組み立て指示書やパーツリストの作成を行えるようになっています。3次元モデルをイラストに変換しているのです。また3次元モデルをXVLに変換して軽量化し、3次元の状態でお客様とデザインレビューする、といったことも行っています。デジタルプロトタイプで試作と同じものを検証できるので、お客様が求めているものとどこが異なるのか、その場でご指示いただけます。
 鬼澤 幅広い取り組みを進めているようですね。
 櫻井 やはり3次元化で差別化するには、設計に取り入れるだけでは十分ではありません。もちろん3次元設計によってコスト削減や納期短縮が可能になりましたし、いただく仕事の量も以前に比べて1−2割増えました。しかしさらなる差別化を進めるには、より広い視野でバリューチェーンを変えていく必要があると考えています。
 鬼澤 このような取り組みは、すべて自力で行っているのですか。
 櫻井 そうです。試行錯誤もいろいろありましたが、その分ノウハウが社内に蓄積できたと思います。今後はアニメーションによるプレゼンテーション等も、積極的に取り入れたいと考えています。
 鬼澤 実は私どもにも「Autodesk Showcase」(オートデスク ショーケース)という製品があり、これをご利用いただくことでビジュアライゼーションやアニメーションが簡単に行えるようになっています。ぜひご検討ください。
 櫻井 わかりました。私どもとしてもできることは何でもやっていきたいと考えておりますので、ぜひ情報をお願いします。

自力で培ったノウハウを今後は外部にも提供
 鬼澤 ところで最近では景気の不透明感が強くなっています。特に半導体業界は市場が低迷しつつあると言われていますが、御社にも影響は出ていますか。
 櫻井 かなり大きな影響が出ています。しかしこのような状況は、逆にチャンスでもあると考えています。
 鬼澤 どのような形でそのチャンスをつかもうと考えていらっしゃいますか。
 櫻井 まずはこれまで通り、お客様からの信頼をいただくことが重要だと考えています。会社を設立してから15年目で、従業員数も社員・パートあわせて70名になりました。このように成長できたのも、お客様から信頼していただいたからだと思います。一人ひとりの従業員も、「お客様に喜んでいただくこと」が自分たちのやりがいや生きがいであると感じており、少しでも能力や技術力を伸ばすため、みんな前向きに挑戦していこうとしています。しかしこれまでのように、設計業務を行うだけではリスクが大きいのも確かです。そのため今後は仕事の幅を広げていくことも考えています。その中核となるのが3次元のノウハウです。
 鬼澤 3次元のノウハウを活かして、新しいビジネスを構築していこうというわけですね。具体的にどのようなビジネスを考えていらっしゃいますか。
メニックス株式会社 櫻井 まずひとつは、すでにお付き合いのあるお客様に対して、3次元モデルを活用したバリューチェーンのご提案をしたいと考えています。私どもの社内では3次元で設計することが多くなっているのですが、お客様に設計内容を納品する時には、2次元データや紙の図面で納品することが少なくありません。これでは私どもの内部は効率化できても、お客様の効率化は進まないのです。3次元モデルで設計内容を納品し、そのモデルを後工程で活用するようになれば、お客様側でも大幅な効率化が可能になるはずです。
 鬼澤 バリューチェーンの革新を、会社の枠を超えて実現しようというわけですね。
 櫻井 そうです。それからコンサルティングも考えています。3次元CADを導入したにもかかわらず、十分な効果が得られていないという企業様は、決して少なくありません。私どもも経験したのでわかるのですが、3次元CADを単体で導入しても、その効果は限られてしまうのです。ライブラリや共通部品の整備を行い、それを流用するためのサーバー環境を整え、さらに後工程で活用できる仕組みが必要です。また3次元モデルをデザインレビューで活用するには、データの軽量化も重要になります。このような環境を構築するのは大変ですし、それなりの投資も必要なので、二の足を踏んでいるケースも多いと思います。しかし成功事例に基づいたコンサルテーションを受けることができれば、このような仕組みの構築を行いやすくなりますし、3次元化の効果をさらに引き出すこともできると思います。

人材確保にも積極的に取り組み次のチャンスをつかむ メニックス株式会社
 鬼澤 機械設計のプロが行う3次元化のコンサルテーションというのは、かなり期待できますね。オートデスクでもシステムエンジニアが3次元化のお手伝いをしていますが、設計そのものがわからないとダメだということは、身にしみて感じています。
 櫻井 ありがとうございます。確かにシステムエンジニアという立場では、難しい側面もあると思います。例えば板金の設計を行うとき、どのようにすればコストダウンできるのかは、CADの知識だけではわかりません。実際の設計経験に基づいた提案ができるのも、弊社の強みのひとつだと認識しています。
 鬼澤 他にはどのような取り組みを進めていますか。
 櫻井 次のチャンスをつかむには、人材の確保も重要だと考えています。そのため今年からインターンシップを導入しました。実はすぐそばに滋賀県立八幡工業高等学校があるのですが、この高校が滋賀県で初めて「デュアルシステム」を導入したので、早速4名の学生を受け入れることにしたのです。
 鬼澤 デュアルシステムとは何ですか。
 櫻井 学校教育と企業実習を並行して実施する制度です。弊社では週に2日、曜日を決めて学生さんに来ていただき、実際の業務を体験してもらっています。
 鬼澤 面白い取り組みですね。
 櫻井 実はこれには、地域貢献という気持ちもあるんです。高校の先生とお話をしたところ、工業高校ではハード/ソフトの最新設備がないため、3次元CADを動かせるところはなかなかないらしいのです。
 それならばぜひ、うちに来て使っていただきたいと考えたのです。
 鬼澤 それでは学生さんはここで、インベンターを使っているのですね。
 櫻井 そうです。みなさん喜んで操作していますし、吸収も早いですね。たった1日である程度の操作ができるようになったので驚いています。私どもの従業員にとっても、刺激になっています。
 鬼澤 景気の状況が不透明な中でも、元気のある企業があるということを知り、こちらも勇気づけられました。今後もぜひ3次元を活用して、ビジネスを拡大していただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

商 号:メニックス株式会社
設 立:平成6年
資本金:3,000,000円
所在地:〒523-0816
    滋賀県近江八幡市西庄町1810番地
TEL:0748-33-2550
URL:http://menix-cad.com/
商号:オートデスク株式会社
URL:http://www.autodesk.co.jp/