

このプロジェクトは江戸時代に用いられた地域区分である藩≠イとに、有志企業が集まって構成されている。有志企業はその地域に根ざした食品、生活雑貨などを製造する老舗企業や中小企業が主体。企業は自社の強みが最も生きる一品を選定し、同プロジェクトが発信する「サムロックブランド」のコンセプトに沿って化粧直しを行い、販売している。
DDRの安藤竜二社長と酒類卸の大岡屋の鈴木裕之社長が意気投合し発足。安藤社長が総合プロデューサーとして、同ブランドのプロデュースや講演会などに奔走している。
仕掛け人の一人である鈴木裕之大岡屋社長は「地方をもっと活気づけるために、中小企業主体でその地域の良さを発信できるネットワークを作りたかった」とプロジェクト発足の狙いを語る。
岡崎市がある三河国から始まった同プロジェクトは現在、尾張国、安芸国、加賀国、駿河国、美濃国の6カ国に広がり、参加企業数は約30社にまで増えた。これまで三河国で発売した商品はサイダーや焼き菓子などの食品から、和ろうそくや漆器といった生活雑貨までさまざま。ユニークなものでは、仏壇店がその技術を生かして作った武士を題材とした人形もある。

同ブランド製品を販売する際に最も重要視するのが“物語”だ。この物語は地域や業界が持つ背景や、どのようにして商品が生まれたのかといったこだわりの部分。そうした物語を重視するのは「物が売れない今の時代こそ、物語は商品の魅力を増し、消費者に強く訴える力がある」(鈴木裕之大岡屋社長)と考えるためだ。
各国はインターネット上に仮想都市を立ち上げて商品を販売している。個性的な名前が付けられた商品をクリックすると、簡単な企業紹介と商品に対する3つのこだわりが示される。商品から各企業のホームページに飛ぶこともできる。
各国の仮想都市内には、国主を筆頭に5人のキャラクターを登場させた。5人はサングラスに革ジャンを着てそれぞれ詳細なプロフィルを持つなど、細部まで“物語”を追求したサイトになっている。商品のデザインにも独自の色が光る。黒と赤を多用したロック調の粋なデザインは、若者に受け入れられやすいように意識したものだ。

同ブランドの製品企画は、企業経営者が自社の強みをどう考えているか、地域活性化のためにどのような影響を与えられるかといった考えを引き出すことから始まる。それ故、プロジェクトに参加するには「経営者自らが、世界に対して自社の製品を発信するという気概を持つことが必須条件」(同)だ。
プロジェクトには異なる業界の企業ながら、同じ志を持った者同士が集まっている。そのため、企業同士が藩や業界を越えてコラボレーション商品を開発するなど、新たな動きも出てきている。
発足から3年がたち、消費者への浸透も進み始めた。各地のイベントに出展しているほか、雑貨店などに納入される機会も増えてきた。08年夏には表参道ヒルズ(東京都渋谷区)に期間限定でこのプロジェクトのアンテナショップを出店。地道にファンを増やし、今では熱心なリピーターも多いという。
町おこしを目的として、これまでも物産展などのイベントが開催されてきた。しかし、物産展は「来場者の年齢層などが限られており、また期間が終わればそのまま忘れられてしまうものが多い」と鈴木社長は問題点を指摘する。
同プロジェクトには、従来の町おこしの問題点を解消するヒントが詰まっている。今後の展望について「日本の地域の良い物を全国に、そして世界に向けて発信していきたい」と夢を描く鈴木社長。三河のサムライの挑戦は始まったばかりだ。
取材:本多由希子(名古屋支社編集部)