熊本県が電動車両の利用に注目し始めたのは太陽光発電産業を振興する取り組みがきっかけ。県は09年6月、商工や環境、土木など担当部署の垣根を越えた庁内横断組織「くまもとソーラープロジェクトチーム」を設置。太陽光発電関連産業の振興に県庁全体で取り組み始めた。電動車両の利用は太陽光発電を使った技術の実証実験項目の一つだった。
電動車両利用に本腰

- 熊本県
09年10月にはプロジェクトチームの活動を踏まえ、電動車両利用を中心テーマにした組織「電気エネルギーの活用による次世代交通システム推進事業検討委員会」が発足した。委員会には地元自動車部品メーカーなどで構成する熊本県自動車関連取引拡大推進協議会(熊本県益城町)が参加、産業界への効果に期待を寄せている。
地元メーカーには電動車両の部品発注だけでなく充電設備関連の仕事への期待も大きい。従来の内燃機関の自動車と電動自動車は機構が大きく異なり、部品も変わる。県は「部品が変われば新規参入のチャンスが増える」(真崎伸一熊本県商工観光労働部新産業振興局長)と期待する。充電設備に関しては車両部品に比べれば技術や品質の面で参入しやすく、設置や運用を含めると地元業者がかかわる余地が大きいと見る産業界関係者も多い。
実証実験の段階へ

- 電動カートの試乗会の様子
電気エネルギーの活用による次世代交通システム推進事業検討委員会の議論の結果、熊本県は10年3月に電動カートの試乗会を開いた。実際に乗った感想から電動カートの普及に向けた課題をまとめるのが目的だ。電動カート未経験者約30人が熊本市内の熊本城や中心市街地などを試乗した。試乗者からは「歩行者にぶつかりそうで心配」などの感想が聞かれた。
熊本県は10年度に入っても太陽光発電産業の振興や電動車両の利用促進に関連した施策を相次いで打ち出している。組織面では太陽光発電など新エネルギー産業を重点的に支援する新産業振興局を設置、同局内に新エネルギー産業振興室を置いた。同課には環境生活部から新エネルギー関連施策を移管している。
また10年度内には充電設備を備えた駐車場2カ所を開設、電動二輪車によるパークアンドライドの実証実験を行う。さらに県は11、12、13年の3カ年で合計80カ所の充電設備の整備を計画している。場所は「道の駅」などを見込んでおり、買い物中に充電してもらう考えだ。
電動車両の連携も加速

- ホンダソルテックの外観
熊本県と県外企業との連携も加速している。10年4月には三菱商事、三菱総合研究所と新エネルギー・環境分野の産業育成に関する協定を結んだ。3者は太陽光をはじめとした自然エネルギーの普及に加え、EVや電動二輪車の充電設備の整備などで協力する。
ホンダは10年7月、国内では熊本県と埼玉県でEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、電動二輪車、電動カートなどの実証実験を10年内に始めることを決めた。実際の交通環境で電動車両を使いながら課題の抽出や環境に対する効果の検証などを行う。実験で使う電動カートはホンダが熊本製作所(熊本県大津町)で生産する製品だ。
実証実験は全地球測位システム(GPS)などの情報通信技術やホンダソルテック(熊本県大津町)が生産している薄膜太陽電池を使った充電設備も組み合わせて行う。
熊本県は今後、2011年からの産業振興策の指針となるビジョンを策定する。太陽電池および電動車両関連は従来以上に重視した内容になる見込みだ。県は両産業を「半導体関連産業、自動車関連産業に次ぐリーディング産業に育てたい」(同)と意気込む。
【地域メモ】
熊本県を代表する産業は半導体関連産業と自動車関連産業。熊本県は富士電機システムズ熊本工場(熊本県南関町)とホンダソルテックの両太陽電池メーカーの進出を契機に06年から太陽光発電産業の振興を本格化している。
取材:関広樹(西部支局)









