中身がカラッポ、見かけだけのPDCAに注意!!
災害が起きないとわからない、それでは安全活動失格だ
「駄馬の先走り」という諺がある。出足の勢いはよいが、ちょっと進めばダメになることの例えだ。工場での安全衛生活動についても、これに類することが時々見られる。現場を巡回すると、「マンネリ化し、困っている」、「部下の安全活動が活性化しない」、そして「安全の問題がなかなか解決しない」などの声を耳にする。その活動の内容を精査してみるとほとんどがPDCAがキッチリとまわっていない場合が多い。
ご承知の通り、PDCAのPはPLAN(計画)、DはDO(実行)、CはCHECK(チェック)、AはACTION(アクション)のことだ。われわれ日本人はその性向として計画(PLAN)を立案し、DO(実行)するのは得意だが、その結果についてチェック(CHECK)し、次のアクションに結び付けるまでに至らないことが多い。これは農耕民族としてのDNAの1つであり、春夏秋冬、一生懸命に農作業するが風水害が発生すれはそれまでの苦労は水泡に帰する。「やるだけやって、後はお天道様次第」という考えは安全活動では捨てて欲しい。
モノづくりを取り巻く環境の変化は、安全管理にも大きく影響を及ぼす。何もしないと、時代に取り残される。無災害が続いていることを、安全だとは、間違えても思ってはいけない。ハードもソフトも、その本質は時間とともに陳腐化・形骸化する。日々、順調であれは人の意識は低下し、作業には慣れが出てくる。そして機械・設備は劣化し、システムやマネジメントは形骸化し、ついには破綻する。
こと安全についても常に時代変化や職場を取り巻く環境を先取りして自社にあった安全管理を創造していくことだ。次の10項目は時代変化などで安全管理を陳腐化および形骸化させる要因だ。
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①安全手法のマンネリ化
②教育体系の形骸化
③高齢化
④多能化と万能化による作業知識、技能の低下
⑤自動化とME化の進展による災害の重篤化
⑥安全部門の縮小
⑦企業レベルの労働災害の減少による関心の低下と有効防止策の構築不能
⑧トップの安全意識低下
⑨安全の伝承が旨くいかない
⑩安全衛生計画の陳腐化
「活動」の言葉を調べると、「働き動くこと」とある。職場の安全活動とは「危険の芽を摘み取るため、適正に道具(活動手法)を使いこなし毎日、実践すること」と言ってよかろう。当然、その活動には目標が掲げられ、計画案を構築し、計画に準じて持ち場や立場で関係者全員が実行し、結果をチェックし、問題を提起し、次の計画に反映させなければならない。
そこでPDCAが必要になってくるのだ。だが、PDCAのまわし方もスパイラルアップさせなくては意味がない。特に日本で行う安全管理活動は日々、アクシデントが発生しない場合は、安全活動が問題なく順調だとと判断する傾向がある。欧米の安全管理の基本は「災害など、危害のおよぶことのないことが証明された状態」をベースにしており、この点は大いに学ぶべきである。
もちろん、厚生労働省が推奨し、労働安全衛生管理マネジメントシステムの幹となっている、リスクアセスメントは危険を正しく視座しており、欧米型に近づきつつ感はある。
安全管理のみならず、品質活動、生産活動、環境活動、原価活動でもPDCAは欠かせない。特に活動の中身のチェックは最も重要である。これができず、大きな事故の結び付いた事例は数多い。
03年4月に発生した美浜原発の蒸気管漏れ事故(4名死亡7名死傷)、2005年3月に起きた竹の塚駅(東京都足立区)踏切で起きた列車事故(2名死亡、5名死傷)をはじめ2000年代に発生した事故や災害の多くが内部あるいは外部からのチェックの形骸化が要因となっているといってもよいだろう。 仕組みやシステムは人間がつくり、人間が管理する。人が介在する限り、ミスやエラーはないとは言えない。会社自体が傾き、大きくブランドイメージを損なうまではいかないものの、工場での安全管理活動のまずさで働く人の身体を傷付けることが、年間55万件以上も起きている。これらの災害の原因は90%近くが不安全行動であるが、その背景には管理や働く環境の不備に起因するものがほとんどである。労働安全衛生マネジメントシステムの大きな幹である、「システム監査(第15条および第17条)」の中でもPDCAの重要性が述べられている。この PDCAは単に「事業所全体でまわす」のではなく、「各部門でまわす」、「係でまわす」そして「1人ひとりがまわす」だ。つまり、各個人がPDCAをまわすことで連鎖ができ、はじめて大きな効果が期待できるのである。ちなみに、ヒヤリハット活動を例にとると、
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①事業所全体活動としてヒヤリハット提案に対するPDCAをまわす
②部門の特質をふまえてハヤリハット提案の対象項目を絞り、PDCAをまわす
③係内で提起されたヒヤリハットの提案や、提案に対する改善状況を掲示する。さらに全員にその進捗がわかるようにPDCAを確実にまわすことで、作業者の「やる気」「やる場」「やる腕」を養う
④作業者の1人ひとりが自らの作業におけるヒヤリハットを顕在化し、仲間と一緒になって危険リスクの低減活動をPDCAをまわしながら改善する
事業所がまわす大きなPDCAサイクルは、各部門、各係、ひいては各個人と、より小さなPDCAサイクルまでつながっているのだ。安全活動をPDCAをまわさないで定着化したという話など、古今東西、聞いたことがない。
みんなからの小さなPDCAが大きなPDCAにつながる
イラスト 小島 早恵









