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かの巻 片時も 忘れてならぬ コミュニケーション

いろはでたどる現場安全への道!!
「前向きのアプローチ」をされたら誰でも嬉しい 「前向きのアプローチ」をされたら誰でも嬉しい

言葉こそ、モチベーション向上の最良のツールである

「何も言わないから大丈夫と思った」、「いつもの作業だから相手の意志を確認しなかった」、そして「異常処置でバタバタしていたので報告しなかった」などのコミュニケーション不足が引き金で事故や災害に結び付いた事例は数多い。

ある日、構内の工事中に4階の床面部分が崩落し、4人の作業者が重軽傷を負った。前日までの工事計画表では、3階と4階部分をつなぐ支柱の強度を補強する水平の梁を設置完了することになっていたが、雨天や欠勤要員などで、全本数の支柱まで水平の梁を取り付けられなかった。

3階と4階の工事業者は異なるため、この工事の進捗状況の管理は、大手K建設会社が行っており、災害発生前日までの工事は予定通り、と判断していた。3階の工事業者は工事の進捗を毎日、報告しなければならなかったのだが、家族に急病人が発生し、翌日に報告しようと報告せずにそのまま帰宅した。

事故当日。4階では雨天の影響による仕事の遅れを取り戻すため、始業前から大型クレーンを使用し鋼材の束を4階の床部分(3階の天井部分)に積んでいた。6トンを積み終えた時点で一気に床面が崩落し、5m下に作業者が墜落したのだ。
 「工事の進捗を報告していたら...」、「出来映えをK建設が確認していれば...」、「始業前の工事開始を3階の工事業者に連絡していたら...」など、事故や災害が起きた後に口から出る言葉は「たら...、れば...」の悔やむものばかりである。


会社では、2人以上の人達が集まり、目的を持って仕事が進められている。仕事の基本はコミュニケーションであることは言わずもがない。そして情報の伝達だけでなく、お互いの気持ちを通い合わせることが大事であり、情報と気持ちを正確に伝え、受け取るという「キャッチボール」を心掛けて実践することがゼロ災確保の近道となる。


職場には多くの危険が潜んでいる。しかし、危険に対する「気づき」は自分1人では十分ではない。作業前のミーティング、安全パトロール結果、そして不具合提案活動を通じ、危険の気づきを行なうが、この場合もコミュニケーションが活動の中核をなす。
安全活動の3種の神器と言われるのは、「ヒヤリハット」、「危険予知」、「指差呼称」だ。いずれもコミュニケーションがポイントであり、事故や災害につながる「ヒヤリ」とした出来事や、「ハット」した経験の情報を同僚と共有化をするために実施するヒヤリ・ハットミーティングでは参加者全員が本音で話し合えるようにすべきであり、より実効的な活動にするには次の事項を実践しよう。

    ①同僚からの情報は「なるほど...」「そうだな...」「同じことがあるかも...」など、肯定的な姿勢で傾聴する。
    ②同僚の危険情報に類似した事象や気づいたことを積極的に述べ、多くの危険情報を共有化する。
    ③危険情報の提起のみではなく、危険を回避する手段も話し合い、現物・現場で全員が行動する。
    ④共有化や取り決めだけでなく、1つでも多くの危険を排除することを念頭にし、問題改善に結び付ける。

コミュニケーションは職場の仲間のみの問題にとどまらず、上司と部下の関係の中でも欠かせない重要事項である。

会社にとって財産は社員、モノ、金、技術、環境などであるが、中でも最も大きな財産は社員であることは言うまでもない。社員の成長と会社への貢献こそが企業が生き残る源泉といえる。一般的に、社員の育成はOJTやOFF―JTを通じてなされるが、言葉のみでの指導・教育に終始するのではなく、心に直接的に影響を与えるハートランゲージ方法や相手の身体に直接的に触れてコミュケーションを図るボディーランゲージの方法を使い分けよう。さらにこの2つの方法には、前向きのアプローチと後退のアプローチがある。両方の使用頻度については、前向きのアプローチが7割、そして後退のアプローチが3割がベストである。

    ①前向きのアプローチ(7割) ・ハートランゲージ⇒誉める、頷く、微笑む、励ます、話しかける ・ボディーランゲージ⇒肩を叩く、手を握る、抱きしめる、撫でる
    ②後退のアプローチ(3割) ・ハートランゲージ⇒無関心、叱る・怒る、嫌味を言う、否定する ・ボディーランゲージ⇒殴る、蹴る、突き飛ばす、引きまわす

職場では言葉を使うコミュニケーションが最も多い。仏教法話の中に「人間は耳は2つで口1つ、多く聞いて少し言うため」とあるが、ここには先人のコミュニケーションの真髄を垣間見ることができる。密なコミュニケーションが現場力を育てるポイントであることは確かだ。そして傾聴に撤して相手の本音を引き出すことに努力すると、クイックレスポンスで行動を取る、言動と行動を一致させる、イエスとノーを明確にする、そして互いの情報を公開し共有化を図るなどができるようになり、職場内での信頼関係が築かれていく。

ゼロ災を確保するには現場で働く人の本音(真実)を常に顕在化させることが肝要である。「問いかけKY」、「相互注意」、「合図応答」など、職場の特質にあったコミュニケーションツールを用いながら危険の芽を1つでも多くつぶしていこう。

自分の話をゆっくりと聞いてもらえると本音を伝えやすくなりませんか!? 自分の話をゆっくりと聞いてもらえると本音を伝えやすくなりませんか!?

イラスト 小島 早恵