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よの巻 よし、やるぞ!3大戒め再徹底

いろはでたどる現場安全への道!!
これらの3 大戒めを1 つずつ守り抜くこと これらの3 大戒めを1 つずつ守り抜くこと

最大の問題は、過去災害の教訓を活かさないこと

現場作業の際、「環境を認知し」、「良し悪しを判断し」そして「脳からの司令による行動」をする。この中で特に大事なのは、「判断」である。この判断が適正でないため、安全トラブルが起きる。次ページに作業項目ごとの戒めを列記した。しかし、現実ではこれらの事項が守られず、災害は発生する。これは、「判断」の欠如の証左だ。判断という言葉の意味を調べると、「ある物事について、自分の考えをこうだと決めること」とあり、そこには真偽・善悪を決定付ける価値観が大きく寄与することは確かだ。安全に対する価値観が醸成されていないと、管理監督者が現物・現場を徹底してどんな指導や指示をしてもうまくいかないのだ。

ある日、電撃症を伴う感電災害が発生した。現場のコンベア装置が電気故障でMC停止の異常が発生し、若い設備保全員が配電盤の扉を開け、通電状態を確認調査した。この配電盤には3000ボルトの高圧が流れていることを本人は知っていたが、手持ちがないこともあり、低電圧用の検電器を用いて、テスターの先端を近づけた。その途端、火花と衝撃が走り、数メートルも吹き飛ばされ、気を失ってしまった。夜勤時で、近くに人がいなかったが、幸い、通りかかったフォークリフトの運転手が発見したため、一命を取りとめた。高圧の電気作業では、「2人作業」の実施は基本だ。設備部門が保有する「設備保全の安全手帳にも「高圧の2人作業の遵守」は記載され、たとえ夜勤時でも、高圧の電気作業は「復帰時間がどんなにかかっても、2人作業を厳守せよ」と教育・指導を行っていた。それにもかかわらず、結果的に事故が起きたのだ。

また、高圧電気に低圧用の検電器を使用した理由は通電部に直接接触させないで電気の磁場付近であれば低圧用の検電器でも十分に使えると勝手に判断し、未秘の行為と言われても致し方あるまい。未必の行為とは、「結果が確実でないが発生するかもしれないと予見し、かつ発生を容認すること」だ。例えば、狭い道路の脇に自転車に乗っている人がいるとしよう。「このまま、自動車で走りぬけたら、自転車に接触するかも...」と思いつつ、道路を通り抜け、接触してしまった。「接触するかも...」「まさかそんなことはあるまい」「でもこのまま進もう」と判断にいたる心情での判断で、法的には「故意」とみなされる。大きな災害が起こると新聞紙上では複雑な原因そして高度なミスなどの言葉を時々、見かけるが、職場で発生する災害原因は「複雑」、「高度」ではなく、いくつもの原因が魑魅魍魎に絡み合い、重層化しているためわかりにくくなっているだけで、突き詰めると単純かつ基本的な要因が災害の源になっている。


戒めとは、「諭し」のことだ。現物現場での指導・教育が最も効果的な手法であろう。製造業における災害原因は、「挟まれや巻き込まれ」、「転倒」および「切れ擦れ」が主要因であるが、大きな災害につながるのは、いつも機械・設備にかかわる事例だ。
機械・設備の3大戒めは「異常時のMC停止」「日々の点検・整備」および「操作時の危険予知(KY)励行」だ。また、建設業における災害原因は毎年、「墜落・転落」が第1位で、次に「挟まれ、巻き込まれ」、3位が「飛来・落下」であり、この3つの原因はここ10年間、変化はない。過去に多くの災害を起こしながら、いまだに教訓が生かされないことは誠に遺憾だ。
高所作業での3大戒めは、「安全帯の着用」「足場と手摺りの設置」および「滑り止めの養生」だが、1人ひとりが「短時間でできる」あるいは「その必要性は知っている」のに、実際の現場では励行されないことに問題の深さを感じる。


被災に遭った人達にインタビューすると、「あの時、ああすれば良かった」「こうすればよかった」との悔やみの言葉を何回となく聞いたが、事が起きてからの反省は誰でもできる。人は経験したことしか、その真実は語れないが、こと安全については、成功の経験が失敗に結びつくことを伝える必要がある。「成功体験」や「敗者復活」などの言葉は間違っても使用しないで欲しい。
私の勤める現場で発生した災害を分析すると、「成功体験」による原因が意外と多く、「MCを止めずに手出しをして腕を巻き込まれた」、「憶測判断し、動力車の前を横切り接触災害を起こした」、「吊り荷の揺れを両手で止めようとして設備との間で身体を挟まれた」などであり、この種の安全トラブルは後を絶たない。
いずれも過去の成功体験によるものであり、初めての作業であれば、臆病心が大きく働き、危険行為はしないが、1度の成功体験で味をしめると、1度が2度に、2度が3度に、3度目ともなれば自信がつき、その自信が過信、過信が油断に結びつき、油断が取り返しのつかない大きな災害を被ることになる。

作業項目ごとの戒めは災害に遭った人たちの「叫び」でもあり、「祈り」でもある。この戒めは格言と同格として日々の作業の中で活かすことだ。過去に数えきれない安全トラブルを経験しながら、その反省を活かせず、類似災害防止活動に躍起になっている。


「安全活動に資料は不要」という言葉があるように、安全の問題は現場第一線で働く人の行動次第だ。3大戒めの遵守と徹底は、災害防止の最大の近道であるが、机上の教育や現場での口頭注意だけでは定着しない。管理監督者が手取り、足取り、毎日、毎時、執念を持ちつつ、現場での継続的な指導を続けるしかないのだ。

もとをたどっていけば単純なミス、原因が多い もとをたどっていけば単純なミス、原因が多い

イラスト 小島 早恵