就業価値観をベースにし、個人に合った現物現場での指導を心得よ!
「便利の裏は不便であり、良さの反対は悪さである」は、1つの真理だと思う。これは物事のみばかりではなく、人間の気質や性格についても同じことが言えると思う。
例えば、「真面目の反対は頑固」、「融通がきくの反対は鷹揚」、「繊細の反対は神経質」、「熱中の反対は廻りを見ない」そして「倹約の反対はケチ」などだ。
安全の問題の行き着く先は人であり、人が基点となっている。しかし、職場は多くの人の集まりであるとともに10 人10 色、問題解決は一筋縄ではいかない。当然、ハ-ドとソフトの内容はその会社の組織文化に大きく影響するが、とりわけ、安全行動は生産現場における従業員の気質や特質が影響するところが大きい。
「やるべきことをやらずに災害を起こした人」、「やらなくてよいことをやり、被災した人」など、ヒューマンエラ-によるトラブルも取り巻く環境との乖離が最大の問題で、熱中型の作業特質やおせっかい型の作業特質が垣間見られる。もちろん、同じ地方、同じ工場、同じ職場の中でも1人ひとりの性格は異なり、最終的には各個人に合った安全指導が必要となる。上図に職場で働く人の特質を10 の区分にわけ、型別に適切と思われる教育指導と管理のポイントを示した。
ある時、清掃作業で右手の指を骨折する災害が発生した。それは稼動中の装置の床面に落ちていたナットを拾おうとして危険領域に右手を差し伸べた時に起きた。しかし意に反して機械の動作が速く、人差し指を挟まれてしまったのだ。当然、この行為は機械停止が大原則であるにもかかわらず、「大丈夫だろう」、「動作の間隙に拾えるはずだ」と考え、早合点をした行為であった。
機械・設備の3大戒めは「異常時のMC停止」「日々の点検・整備」および「操作時の危険予知(KY)励行」だ。また、建設業における災害原因は毎年、「墜落・転落」が第1位で、次に「挟まれ、巻き込まれ」、3位が「飛来・落下」であり、この3つの原因はここ10年間、変化はない。過去に多くの災害を起こしながら、いまだに教訓が生かされないことは誠に遺憾だ。
被災者は日頃からドタバタした作業をしがちで、その割には無駄な動きが多く、作業能率も高くない作業者として評価されていた。当然、職場では早合点やあわてやすい人ばかりではなく、熱中型の人、堅物型の人、意識過剰型の人のほか、さまざまなタイプの人が働いている。そのため、管理監督する側も、技能員の特質を見極めた安全指導をしなければならないのだ。
また、最近はグロ-バル化の時代が進み、海外工場での安全管理も不可欠になっている。その際、それぞれの国に則した管理を念頭において推進しなければうまくいかない。例えば、タイ王国では国民の96 %が仏教徒であり、工場内にはお坊さんをはじめ、農業従事者、水上生活者などが同じ現場でともに働いており、多用な価値観の人が集合している。タイの人たちは一般的には穏やかな性格であるが、ミスやエラーをなぜ、なぜ、なぜと問い詰められると自分を否定されたものと判断し、非常に嫌う傾向があり、日本でいう、「ナゼナゼ分析」などの導入は非常に困難である。
さらに、気温が高いせいか、動作がゆったりしており、日本人のように慌てふためいた行動があまりみられず、異常処置時の咄嗟の行動はほとんど見られない傾向がある。そして、貧富の差は大きいが、恵まれた自然環境により、飢餓はなく各自、幸せと考え、家族第一主義の生活を基盤としている人が多い。また危険を予知するために行なう指差呼称を取ってもアジアの某国では相手に指を向けること自体、タブー視されている。日本国内で効果があるとしてそのまま簡単に採用できるものではあるまい。
人が人たる所以は、言葉を持つことだ。相互のコニュケーションは言葉を通じて行うが、この言葉には、地域の特徴が表れる。例えば、「よか!」という方言は福岡地方を中心に使用されているのだが、この言葉は肯定にも否定する場合にも使われ、曖昧模糊で判然とせず、鷹揚な使い方をする。
ある時、2名で実施した異常処置の復帰作業で災害が発生した。プレス型の機械が多く、並んだトレーン装置の騒音職場であり、装置を再起動させるために「動かすけん!よかですか?」と声を掛けたところ、10 数m 先にいた被災者は「よか!」と答えたために操作ボタンを押してしまったのだ。しかし、被災者は「まだ動かさなくてもよろしい」という意思を伝えたつもりだったのだ。
その一方、操作者は「起動しても大丈夫だ」と判断したのだ。幸い赤チン程度の不休災害におさまったが、笑うに笑えぬトラブルであった。
この「よか」は、福岡地方では多用され、懐深く(判然としない)、かつ鷹揚な県民気質を表してる。また最近、県民性がTVや本でクロ-ズアップされているが、これも人と人とのかかわりが希薄になった時代に、周りの人のことをもっとよく知りたい、そしてよりよいコミニュケ-ションを取りたいと思う人々が多くなってきたことの表れであろう。
日本の47 都道府県それぞれの地域の性質の決定要素はその地域の歴史気候、風土および産業などであろう。会社においても企業・工場の歴史、風土はもとより、職場の人員の構成(年齢、世代、男女などの組合せ他)、製品、職種などがその会社の文化、風土を形づくる。それを十分に勘案したこと前提に、1人ひとりの特質を考慮し、そのうえで教育・就業価値観をわきまえた安全管理をしていくことが大事になってくる。
イラスト 小島 早恵









