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その巻 それぞれの作業に活かせ!!3種の神器

いろはでたどる現場安全への道!!
それぞれの作業に活かせ!!3種の神器

「3 種の神器」を忘れた作業には明日はない

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の普及で、リスクアセスメントの実施が常識の時代だ。機械・設備および作業に係わる潜在するリスク(発生確率と災害の大きさの組み合わせ)を定量化し、安全化を最優先に対策する活動でもある。

しかし、いくらリスクアセスメントを進めても、実現にリスクを完全にゼロにすることは至難だ。残されたリスクに対応するには、危険に対する感受性が重要となる。この感受性を呼び起こす方法が「危険予知(KY)」、「ヒヤリ・ハット」および「指差呼称」の3手法だ。この3手法は「3種の神器」と称され、これに勝る方法はないだろう。

新入社員などが職場に配属された時に、最初に行うのが危険予知に関わる教育や訓練だ。危険の感受性に関わる能力を付与する場合は危険予知訓練(KYT)と危険予知活動(KYK)を区分し実施することが望まれる。危険予知訓練(KYT)は現場の危険予知(KY)のための準備として行う。また、危険予知活動(KYK)は作業行動を開始直前に、実作業の中で発生が予想されるアクシデントを予想し、未然の防止を図る。危険予知訓練(KYK)危険予知活動(KYK)は車の両輪のように一対のものとして考え、常に作業実態に合わせた工夫と改善を進めていかないと陳腐化する恐れがある。

ヒヤリハット活動は、1企業当りの事故・災害が減少した現在では、年間数件のレベルの安全成績のために事故・災害を教材として安全の感受性を向上させることは難しい。だからこそ、ヒヤリハット活動の活性化の重要性は高まっている。

ヒヤリハットした事例を「ナゼ、ナゼ、ナゼ」と分析・追及すると、多くの課題が提起され、不安全状態や不安全行動がクローズアップされる。

これらを感受性アップに移行させ、現物現場の類似作業に活かすことはゼロ災への近道だ。また、ヒヤリハットに関わる報告・提案活動には上司に直接、提出する方式や職場に設置する箱に入れさせる方式、安全スタッフに提出する方式などが考えられる。それぞれに特徴があるが、一番大事なのは、提案後の速やかな対応だ。ヒヤリハット提案活動は、件数至上主義では処理や改善が思うように進まず、提案者に不信感を抱かせてしまう活動になりやすい。ヒヤリハット活動は単に職場の問題点の解決や提案者に対しての感受性アップのみが目的ではなかろう。クイックレスポンスのない活動は職場運営のベースとなる信頼関係を損なう恐れがある。

ときどき、対応できるのに管理監督者が報告・提案書を机の中にしまいこんでいることがあるが、掲示板などに項目、提案者名、改善内容そして納期などを一覧化した見える化を心がけよう。そのことが「次もヒヤリ・ハットが発生した場合、すぐに提案しよう」と、危険に対する感受性アップにつながるからだ。

作業行動の直近で最後に行うべきなのが、指差呼称である。指差呼称は誤操作、誤判断、誤作業などを防止するために安全確認すべきことを、「○○○○ヨシ!」と対象物に対して腕を伸ばして差し、はっきりした声で呼称することである。

中央労働災害防止協会では、ウッカリ、ボンヤリ、錯覚などにより起こりうるヒューマンエラー事故防止の具体的な手法として、指差呼称の推奨を開始したのが1981 年であり、その後の災害防止に大きな効果を発揮し、現在も多くの企業で実施されている。指差呼称の有用性は鉄道総合技術研究所で証明され、何もしない時に比べ、「呼称」、「指差し」、「指差し呼称」して反応する場合の順序で作業の正確度は高くなる。特に何もしないと時(誤り率2.38 %)に比べ、指差呼称した場合(誤り率0.38 %)のミスの発生率は約6分の1に減少する。

「人間はミスする動物である」。安全は機械・設備の本質安全化が基本であるが、すべてを本質安全化はできない。残された危険に対しては、人側の感受性と作業後との安全行動に頼るしかない。「3種の神器」は1人ひとりにゆだねられた安全確保の最終手段でもある。


イラスト 小島 早恵