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新製品普及へ認定効果大

この記事は2011年2月21日付日刊工業新聞に掲載されました。
中小企業公的支援策活用のポイント

採用実績でお墨付き

中小企業の新製品を普及させるうえで「最後のひと押し」となる自治体の支援制度が注目されている。東京都は独創性ある新製品を認定し、一部を購入。採用実績として「お墨付き」を与える「トライアル発注認定制度」を実施している。企業にとって官公需要の獲得にとどまらず、直接受注につながるケースも広がっており、成長分野への進出や技術の事業化への弾みとなっている。3月中旬には3年目となる2011年度の申請受け付けが始まる。 (神崎明子)

自治体のトライアル発注制度

中小企業の新製品を自治体が買い上げる「トライアル発注制度」は03年に佐賀県が全国で初めて導入。都は現在の制度を09年度から実施している。技術力や独創性がありながらも経営資源が限られる中小企業の販路拡大を支援するのが狙いで、書類審査や面接審査を経て事業者が決定する。

対象となるのは販売開始から5年以内の製品で、既存製品と異なる使用価値を有するか技術の高度化、生産性の向上に寄与するかなどが基準となる。認定製品は都がホームページなどを通じてPRするほか、対象製品の一部は年3000万円の予算枠で買い上げる。初年度は213件の応募から64商品、10年度は138件の応募から25商品が認定された。

認定企業の一つ、オンチップ・バイオテクノロジーズ(東京都小金井市)社長の小林雅之さんはベンチャービジネスを軌道に乗せるうえで「ファーストユーザーを見つけることが最も難しい」と指摘する。とりわけ同社が市場とする医療分野では前例や採用実績を重視する傾向が強いだけに、公的機関での導入実績や評価データはその後の営業活動で「大いに役立った」(同)という。

国がさまざまな角度から産業育成に取り組む一方で、製品開発と市場投入の間に立ちはだかる障害、いわゆる「ダーウィンの海」を越えるための支援策は十分ではないとの指摘もある。「トライアル発注」は中小企業がビジネスを拡大するうえで直面する課題を克服する実効性ある施策として評価が高く、自治体間の一層の制度連携を期待する声もある。全国に先駆けて制度を導入した佐賀県では「認定だけにとどまっている自治体が多いが、予算を確保し実際に購入することが成果拡大につながる」(農林水産商工本部新産業課)と話している。

オンチップ・バイオテクノ/VB事業軌道に

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オンチップ・バイオテクノロジーズが開発した
マイクロ流路チップ

研究開発型ベンチャーの「オンチップ・バイオテクノロジーズ」の細胞解析装置(フローサイトメーター)。開発から2年を経過した現在、本格普及の道が開けてきた。国立がん研究センターや静岡がんセンターに続き、このほど大手製薬メーカー2社からの受注を獲得した。

サンプルを含む液体通過部分を交換容易なマイクロ流路チップ化することで、メンテナンス性の向上や大幅な小型化を実現した世界初の装置。だが、医療の世界では、「新規性」が逆に受注獲得を阻んできた。これを乗り越えるきっかけとなったのが東京都医学研究機構への納入実績だ。

同装置は微量のサンプルで高精度な測定が可能になるため、ウイルス感染細胞の検出や末梢(まっしょう)血循環がん細胞の計数を通じた治療効果の評価などで大きな役割を果たすことが期待される。

同社にとっても主戦場である米国進出には国内の販売実績づくりが欠かせない。今回の認定は、研究開発が製品に結実し、本格的なビジネス展開を模索する過程で「絶好のタイミングだった」(小林社長)と話している。

東日製作所/市場開拓にPR効果

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東日製作所のトルクレンチを使用した
都バスの整備風景

2011年1月下旬―。都内14カ所の都営バス車庫で車両整備の講習会が相次ぎ開催された。整備担当者が一様に手にするのは東日製作所(大田区)が開発したトルクレンチ。これまで二人がかりで行っていたホイールナットの締め付け作業を一人で、かつ正確に行えるよう増力装置を付けた新製品で、都交通局自動車部車両課が採用した。

東日製作所営業部の清水勝巳さんは、「都バスの営業所は都内各地にあるため、ユーザーが実際に目にする機会が増え、商談が進みやすい」と話す。

幅広い産業分野で用いられている同社のトルク技術だが、今回の制度活用の背景には運輸関連市場を開拓する狙いがある。大型車両を多く抱える物流企業では潜在的な車両整備需要が見込めることから拡販を本格化する。

そのうえで期待を寄せるのが自治体間の制度連携。佐賀県が中心となって組織する「トライアル発注全国ネットワーク」には都も加入するが、「こうした枠組みが受注拡大につながれば」(加藤雄司マーケティング部長)と話している。

タカハシ金型サービス/潜在需要つかむ

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タカハシ金型サービスの爪削り器「うす削り」

制度が想定するのは産業用途だけではない。一般消費者向けの日用品で予想以上のヒットにつながったケースもある。

タカハシ金型サービス(東京都板橋区)が開発した「爪削り器」(商品名=うす削り)。直径25ミリメートルほどのプラスチック円盤の中心部にステンレス刃を埋め込んだ構造で、円のカーブに指先を沿わせるだけで、爪が削れる仕組みだ。感覚で削り取るため、高齢者や身体障害者も扱いやすく深爪や爪割れの心配がない。折しも医療、介護施設における高齢者の爪切り問題が社会的な関心を集めるなかで潜在ニーズを捉えた形だ。

火付け役となったのは製品認定後に開催された地元信用金庫のイベント。一日で400個が完売し、その後も問い合わせが殺到。東急ハンズなど大型店でも取り扱っており、現在までに5000個以上を販売。取材中も全国から注文が舞い込んでいた。

社長の高橋健司さんは、中小企業の技術力やアイデアを「街の発明家」で終わらせないためには「客観的な評価が不可欠」と話す。将来は近隣の福祉施設に爪削り器の生産を委託する予定で、地域貢献にもつなげたいと考えている。