読み物チャンネル

第52回 ユーザーに直接聞かないとわからない

ものづくりデザイン講座

「黒色の自転車は売れないよ」と、知人の中国人女性からアドバイスされました。 やっぱりユーザーに直聞かないとわからないとそのとき強く実感しました。

今私はとある自転車のデザインをしているのですが、ただいまデザインする上でとても重要になるマーケティング作業中。例えばその自転車が需要が大きい中国で販売することを想定して、ユーザーの意見をヒアリングしています。

「すると、50才前後の年齢の人には黒色の自転車は受け入れてもらえないってことですか?」とその知人に尋ねると、「黒色は夜道では見えにくく事故にあいやすいから不評なんです」と説明をしてくれました。

確かに、上海やその知人の出身地では、日がくれてから自転車に乗るときにライトを点灯しない人が大勢いると聞いています。ペダルが重くなるからという理由が一番のようですが、事故にあってしまうようでは本末転倒です。

「では、その年齢の人たちには何色お自転車が欲しいのでしょう?」と、また違う質問をその友人にすると、「赤や黄色」と答えてくれました。赤や黄色?!日本人の感覚からはちょっと派手な気がしますが、単に好き嫌いの好みでその色を求めているわけではなく、夜間に自転車に乗る場合の事故防止につながるという意識でその色を好んでいるようです。

同じく、白色なども自転車の色には人気が低いそうです。好き嫌いの色の好みではなく、汚れや傷が目立つからという理由でした。日本では白や黒い色の自転車は受け入れやすい(というか比較的に人気の色ですが)のですが、その土地の生活観一つで変わってくることがこのヒアリングからよくわかりました。

「それから、折りたたみ自転車が中国の特に学生にとても人気である」とも教えてもらいました。かっこいいからという理由もですが、自転車の盗難が絶えないので策として自宅まで持ち込めるようにというニーズがあるようです。

このように、色、形、構造などこの自転車一つとって考えてみても、ユーザーの事情がそれぞれにあります。いきなりものをデザインしはじめるのではなく、まずはユーザーに直接聞くことがデザインの第一歩です。これをマーケティングともいいますが、その得たマーケティング結果を踏まえて形にするのがデザイナーなので、これからもユーザーのおかれている事情を良く理解して欲しいですね。

あとがきByノトサチ

今回も最後までお読みいただきましてありがとうございます。自転車のデザインははじめてですが、やりはじめると確かにその自転車の歴史が古いだけあってとても奥深く、ユーザーの使いやすさを追求すると、普段良く見慣れた"ママチャリ"の形が最高によくデザインされていることがわかります。しかし、ママチャリは使いやすさは最高のものですが、それゆえにかっこうを気にしないのでボテっとしたデザインになってしまいます。使いやすくも、かっこいいデザインってなんだ?!ってことにただいま挑戦中です。

能 登  左 知(のと さち)
株式会社サチコーポレーション 代表取締役
和歌山市生まれ。Kansas City Art Institute工業デザイン科BFA学士修了。現代経営論プログラム終了。帰国後、国・県・地方自治団体のデザイン経営専門家として創業における事業の見せ方についてアドバイスする。またその約1,500件の事例を全国各地でセミナー・講演活動している。
また、現在は工業デザイナーとして水素燃料電池からファッションアクセサリーまで幅広くデザインする日々を送っている。
www.sachicorp.com (サチコーポレーション)