5Sの街を全国へ発信ー。栃木県足利市で中小企業が連携し、製造業の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動を行政や教育現場、そしてまちづくりへ活用しようと取り組みが進んでいる。製造現場の5S担当者らがインストラクターとなって、各地で5Sを指導するこの活動。その取り組みに、改善活動に悩む国内の大手企業も注目しており、視察の要望が毎月のように訪れる。足利流の5S活動とは一体何か。
「足利5S学校」
日本最古の学校である史跡足利学校。同校で11月、5Sの指導者を認証する認証式が開かれた。今回、新たに認証されるのは市内の中小企業や足利市役所などから派遣された11人。半年間の厳しい実習を得て、5Sのプロとして正式に認められた。認証式ではこの内の一人「足利流5Sの普及に向け全力で取り組むことを誓う」と声高らかに関係者らの前で宣言した。
今、足利市では足利5S推進ネットワーク協議会(石井金吾会長=石井機械製作所会長)、通称「足利5S学校」が中心となった5Sの普及活動が活発だ。足利学校にならって命名したもので石井会長は「足利学校は開校当時、全国から学問を志した志士が来校した。これに習い、5Sの発信地として全国への普及につなげたい」と説明する。
発足は2008年。「5Sを通じて美化意識を広げ、安心・安全な町づくりにつなげたい」という石井会長らの思いに賛同した市内の中小企業88社や市、教育委員会などが参加。09年に開会宣言式を開き、市総ぐるみで5Sの普及に向けて動きだした。
モラル向上に
5Sはもともと、企業の生産性向上などにつながるものとして導入されてきた。自動車部品など金属加工業関係者が多い足利市でも、企業単位で取り組みが始まっていたという。
だが、「5Sは決められたルールをきちんと守ることを意味する。これはモラルの向上につながる」(深井孟教頭=深井製作所社長)との考えから、産業界だけでなく、まちづくりという地域への普及活動に発展した。
都市計画など大きな構想でなく、同協議会が描くのは美化意識が浸透した街というシンプルな構想。「コストもかけないで、身近に取り組める」(同)というわけだ。
市も大豆生田実(おおまみうだみのる)市長が「5S活動で業務の効率化を図り、行政サービス向上につなげたい」と強調するなど期待は大きい。小・中学校など教育現場では人材育成にもつながる。実際、足利工業高校と清風高校の2校が5Sを導入した。
こうした街ぐるみの足利の5S活動に、多くの国内大手メーカーらが相次いで視察に足を運ぶ。この背景について、「多くの企業関係者らが話すのは5Sを導入しても定着しないこと。足利5S活動の特徴は上からの押しつけでなく、従業員自らが楽しんでやることにある。見学に訪れた関係者らは、そこにヒントを得たという声が多い」と同会議所の関係者は話す。
また、この活動は経済産業省の耳にも届いている。同省では生産性向上のために作成した事業改善マニュアルでは、その内の一つに5Sを掲げている。同省の担当者は「足利市の取り組みは全国のお手本になるもの。生産性向上の輪が全国に広がるきっかけになってほしい」と話す。
11人の5S侍
現在、5S学校にはインストラクターが1、2期生合わせて18人を認定した。今後はこの11人の・5S侍・が各地に赴き、具体的な指導に入る計画で新たに3期生の募集も計画している。足利5S学校の取り組みは、市内にとどまらず、全国からも注目を集めるようになった。
現在、同会議所の正面玄関横には縦4・8メートル×横2・4メートルの大きな旗がかかっている。同会議所が活動スタートに沿い、「街のシンボル」の期待を込めて作成したものだ。旗に刻まれた「5Sの街・足利」の実現に向け、関係者らの取り組みには全国の注目が集まっている。
【地域メモ】
10月中旬には中国石こう省の科学技術代表団22人が足利5S活動の視察を受け入れた。生産性向上は日本だけでなく、生産拠点が集積する中国などアジア諸国でも共通の課題。足利5S活動がグローバルに注目される日がくるかもしれない。
取材:杉浦武士(栃木支局)









