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深刻化する地球規模の水処理問題に最新技術で貢献 [旭化成株式会社/旭化成ケミカルズ株式会社]

総合化学

 旭化成の中空糸ろ過膜「マイクローザ」は2種類で展開しており、「マイクローザUF(限外ろ過膜)」は孔径0.001マイクロメートル~0.01マイクロメートルで蛋白、エンドトキシンなど分子レベルのろ過が可能。内側と外側で2回ろ過するダブルスキン構造で、高い水質を得ることができる。もう一つの「マイクローザMF(精密ろ過)」は孔径0.1マイクロメートルで、菌体や濁質などのレベルのろ過向けだ(図1)。
 市場投入当初は自動車の電着塗装ラインで採用され、食品、発酵、エレクトロニクスなどの分野に用途を広げてきたが、90年代に入って水問題が世界的にクローズアップされ始めたことに対応し、上下水道分野に参入した。マイクローザの需要が急増したきっかけは米国の上水場における寄生性原虫クリプトスポリジウムの問題。クリプトスポリジウムは下痢の原因にもなっている病原性の原虫で、砂ろ過方式では確実に除去できず塩素では死なない。
 このためクリプトスポリジウムを除去できる膜処理の需要が拡大した。米国では05年に原虫の混入を規制する法律が成立しており、10年以降、対策を講じなければならない浄水場が順次増加していく。また膜処理方式は従来法(凝集沈殿+砂ろ過方式)に比べて高機能であると同時に、メンテナンスが容易。また設置面積も従来法の処理場よりもコンパクトですむのが特長で、こうしたメリットが認識されるとともに市場が拡大していった格好。
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図1 MF、UFのスペック

 こうした流れを追い風にマイクローザは05年以降に新規採用された米国上水道の膜処理市場で50%超のシェアを確立している。10年6月には、中国淅江省杭州市からアジア最大規模の1日当たりの処理量30万立方メートルの水道浄水場向け膜モジュールを受注。その他、韓国最大規模の石油化学廃水処理施設(1日当たりの処理量15,000立方メートル)やスリランカの水道浄水施設(1日当たりの処理量6,500立方メートル)からも大型受注を確保した。
 このように、米国での採用実績をもとに、中国、シンガポール、韓国をはじめ水不足や水質向上のニーズが高まる地域での採用が拡大している。

 こうした流れを追い風にマイクローザは05年以降に新規採用された米国上水道の膜処理市場で50%超のシェアを確立している。10年6月には、中国淅江省杭州市からアジア最大規模の1日当たりの処理量30万立方メートルの水道浄水場向け膜モジュールを受注。その他、韓国最大規模の石油化学廃水処理施設(1日当たりの処理量15,000立方メートル)やスリランカの水道浄水施設(1日当たりの処理量6,500立方メートル)からも大型受注を確保した。
 このように、米国での採用実績をもとに、中国、シンガポール、韓国をはじめ水不足や水質向上のニーズが高まる地域での採用が拡大している。

中国で注目されるMBRと廃水リサイクル

 水問題が急速に悪化している中国において、活性汚泥槽と膜処理を組み合わせた「メンブレン・バイオ・リアクター(MBR)=写真1」の受注が拡大している。06年には、石油精製や化学工場の大型の廃水処理用途や下水処理用途として受注。07年には、河川浄化用途として、温楡河の再生水場プロジェクト向けの案件を受注。処理能力が1日当たり10万立方メートル規模は、世界最大級のMBR導入事例となった。
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写真1 中国で受注拡大しているMBR設備

 MBRは今後の膜処理システムの主流の一つとみなされており、将来的な受注増加が期待できる。
 中国は旭化成の水関連における新規事業推進の場でもある。同社は今後の水処理事業の戦略としてこれまでのようなグローバルレベルでの膜モジュール事業拡大と同時に、「水フロンティア事業」として膜分離技術を生かした新規事業の確立を目指している。その一つとして同社が力を入れているのが「廃水リサイクルサービス事業」。工場で廃水処理された工業廃水を膜でリサイクルし、工業用水として再利用することでアジアを中心とした水不足問題の解決につなげるのが狙いだ。同社が世界最大規模のMBRを受注した中国は水問題に対処するため、06年から10年を対象期間とする第11次五カ年計画において10年の単位工業生産当たりの水使用量を05年比30%削減することを目標としている。
 この一環として電子、電気産業が集結している広東省の主要都市でプリント基板、メッキ、半導体の3業種の工場新増設に対し、60%以上の廃水リサイクルを許可条件とする制度が始まっている。今後はこうした取り組みが全土に広がっていくことが予想されている。
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写真2 ソニーケミカル(蘇州)の廃水リサイクル設備

 中国における廃水リサイクルサービスの第一弾として受注したのが江蘇省蘇州市の「ソニーケミカル(蘇州)有限公司」向けの案件(写真2)。旭化成が廃水リサイクル用のプラントを建設、所有・運営し、ソニーケミカルの廃水処理水を膜で高度処理。これを工業用水としてソニーケミカルに供給してリサイクルサービス料を得る「ビルド・オウン・オペレート(BOO)」方式だ。同案件では1日当たり約1,900トンの廃水リサイクルサービスを09年2月に稼動を開始した。さらに10年11月には、蘇州市で2つめの案件が稼動した。個別企業の案件だけでなく、工業団地における廃水リサイクルの一括受注なども期待でき、同社では提案・受注活動を強化していく方針だ。

アジア最大の下水処理場を受注

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写真3 シンガポール・ウルパンダン下水処理場設備

 廃水リサイクルの推進に加えて、同社では新規事業として地下水の膜処理による飲料水化や膜ユニットによる分散型生活廃水再生利用、高性能のリン吸着材による高いレベルのリン除去なども検討している。また水問題の研究のメッカとなりつつあるシンガポールでも実績を積み上げている。旭化成は同国最大の下水再利用施設である「ウルパンダン下水処理場」向けのMFモジュールを受注(写真3)。マイクローザと逆浸透膜(RO)を組み合わせて下水の2次廃水を工業用水にリサイクルするプラントで、処理能力は1日当たり19万1,000立方メートルだ。隣国マレーシアから水を輸入しているシンガポールは90年代の終わりから「NEWater」施策を強力に推進している。NEWaterは下水処理場で処理した水を第1段階としてマイクロフィルター(MF)でろ過し、コロイド、細菌、ウィルスなどを除去。

 第2段階で逆浸透膜(RO)を用い、MFを通り抜けた微細な重金属、無機イオン、有機物などを取り除いてほぼ純水と同じ状態に処理。最後に紫外線による殺菌で有機物質を不活性化して飲料用水に適したレベルにするもの。水の調達で一般的な海水淡水化に比べてコストが安い。旭化成はシンガポールの公益事業庁(PUB)が進めているNEWaterプロジェクトに参画、ウルパンダン、ベドックの下水処理場に膜モジュールを提供しており、NEWaterの全量の40%をろ過している計算だ。
 日本国内では地下水の膜処理による飲料水化を目的としたプラントを同社・守山支社(滋賀県守山市)をはじめ国内10カ所に設置。また、世界最速性能のリン吸着剤の開発に成功、実証パイロット運転を実施している。中国では、大規模開発マンションやニュータウン向けの分散生活廃水の再利用システムの研究開発も推進している。

世界1,000カ所にマイクローザを納入

  旭化成は11年度よりスタートした、中期経営計画「For Tomorrow2015」の事業戦略の一つとして、環境・エネルギー関連事業の拡大を進めていく。マイクローザの導入実績は世界1,000カ所、世界シェアは22%。今後、さらにターゲット地域をアジア、中東へと拡大し、上水道から下水・廃水回収、海水淡水化の前工程などへの用途拡大、廃水リサイクル事業などの関連事業への展開など、世界的な水問題の深刻化に技術で応えることをモットーに事業を推進する構えだ。

グリーン情報

目指すのは「マイクロフィルターの王座」

 マイクローザの名前は「マイクロフィルターの王座」を縮めてつくられたもの。もともと同社の繊維事業で展開していたポリアクリロニトリル(PAN)製品の高機能化、高付加価値化の一貫として開発された。中空糸膜は片側が閉じたストロー状の形状で、壁面に極めて微細な孔を設けており、この孔を使って精密なろ過を行う仕組み。
 旭化成の「マイクローザ」は液体の分離、精製や除濁に用いられる中空糸膜。世界的な水不足や水質汚染の深刻化とともに、上下水道の水処理向けなどで受注を伸ばしている。
 これまでの上下水道向けの水処理から廃水リサイクルにも事業領域を拡大しており、グローバル展開を進めている。

会社名
旭化成株式会社
代表者名
藤原 健嗣
所在地
〒101―8101 東京都千代田区神田神保町1―105神保町三井ビルディング
電話
03―3296―3000
FAX
03―3296―3161
資本金
1,033億8,900万円
URL
http://www.asahi-kasei.co.jp